あのおなじみ、恵比寿鯛釣の掛軸の絵柄でも知られる、親しみ深いえびす顔の神様が夷様です。
いつもふくぶくしい御体格に釣り竿と鯛を小脇に抱えているお姿は何ともユーモラスといえましょう。
あの釣り竿には「釣りして網せず」の精神が反映されており、暴利を貪らない清栄なるお心に商売繁盛の神様としての人気が集まりました。
 そんな恵比寿様も、もとを質せば伊弉諾尊(イザナギノミコト)の第三子でいらっしゃいます。父である男性神イザナギノミコトは女性神イザナミノミコトとの間において、男神の余計な部分と女神の体の不足している部分を合わせて結婚され、日本列島の形をなす大小末広がりな8つの島が生まれました。アマテラスオオミカミやスサノオノミコトもまた、恵比寿様同様にイザナギノミコトの御子である神々です。夷様も然るに摂津西宮に鎮座した日本の神ということになるわけです。七福神の中でも希有なる我が国発祥のご神体なのです。

 民間信仰として素朴に祀られてきた恵比寿様からもたさられる御利益、また恵比寿様の役割は、まずはじめに生業守護を司り、福利をもたらす神として夷三郎とも称されており、「源平盛衰記」中にもその御名が見られます。事代主(ことしろぬし)神とも伝えられておりますが、農村では田の神、漁村では大漁の神様として親しまれております。